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2013年2月12日 (火)

八ヶ岳南沢小滝大滝・阿弥陀北稜

八ヶ岳の岩稜岩壁はあらかた登ってしまったが、入門ルートとされる阿弥陀北稜と横岳石尊稜はまだ登ってなかったので、まず手始めに阿弥陀北稜を山の仲間と登ることとし、ついでに入山日には南沢小滝、下山日には南沢大滝も登ってしまおうという欲張りなブランである。

深夜に美濃戸口に着き、軽自動車に四人がぎゅうぎゅう積めで一夜を明かす。身動きできない狭さだが、おかげで寒さを感じることもなく朝を迎える。
富山から参加のTさんも加えた総勢5人で美濃戸口を出発する。美濃戸まではさほどの雪の量でもなく、この分なら軽自動車でも入れたのにと悔しがるが、歩いても1時間程度である。美濃戸を過ぎて2時間ほどで、南沢小滝に着く。
南沢小滝はクライミングを再開して間もない頃に20年以上も前の装備で登ってまわりのクライマーの顰蹙を買った所であるが、その時はトップロープで登ったので、リードクライミングは今日が初めてである。結構大勢のパーティーが取りついてロープがすだれ状態になっていたので、一番左の壁に取り付く。高さはないが、部分的にバーチカル気味で氷も硬く、スクリューを入れるのに苦労する。アックステンションをかけてなんとかスクリューをねじ込み、上部は右のやや傾斜の落ちた部分に逃げて終了し、奥の立木を支点にしてロワーダウンする。メンバーが交互にトップロープで登った後、真ん中やや右の窪んだ箇所にロープを張っていたパーティーとお互いにロープを借りあって、トップロープで登る。こちらの方が長いが、傾斜が緩く氷も柔らかいので登り易い。
Photo_3

一通り登ったので終わりにするつもりだったか、メンバーの一人がリードをしてみたいと言うので、他のメンバーには先に行者小屋でテントを張ってもらうことにし、私だけ彼のリードに付き合うことにする。私が残置したスクリューを利用するので、リード自体は問題なかったが、ロワーダウンする段になってからが大変だった。凍りついたロープが支点の立木を通過できずに動かなくなってしまうのだ。支点の位置をずらしたりしてみたりするが、やはり途中で動かなくなってしまう。私にアドバイスを求めてくるが、下で状況がわからない以上は、彼の判断力に頼る他はない。やがて支点の場所を変えてみると言って、しばらくしてから降りてくる。どのような支点セットを行ったのか分からないので、少し不安はあったが、ともかくも無事に降りてきたのてホッとする。荷物の整理をしてから我々も出発する。行者小屋の手前で暗くなったのでライトを着けて登り出すと上の方からも明かりが見える。テントを張り終えたメンバーが迎えにきてくれたのだ。おかげでなんとかテントまでたどり着き長い一日が終わった。

翌日は行程が長いので、夜明け前に行動を開始する。北稜の岩場に向かっての樹林帯の長い登りが続く。やがて前方の視界が開け、正面にはこれから登る阿弥陀北稜、右手には肩をいからしたような北西稜が望める素晴らしい眺めである。
北稜基部付近には数パーティーが登っているのが見える。と思ったら、我々の登っている尾根の隣の尾根から登ってくるパーティーや我々の後ろから登ってくるパーティーなど、今日の北稜は大渋滞になりそうな予感がする。そのため我々もスピードを上げて先行パーティーに追い付き、先行パーティーがロープを使用している急な雪面も我々のパーティーの力量では不要と判断してノーロープで行ったので、1パーティーを抜いて岩場の取り付きに出る。
しばらく順番待ちの後、我々の番となる。オーダーは私が二人同時引き上げで先行し、残りはつるべで後続する予定である。1ピッチ目はリッジを回り込むところがややバランスを要するが、後は問題なく確保点に着く。ところが、支点に利用できそうな岩角は全て他のパーティーに使われていたので、やむを得ず細い立木二本にそれぞれスリングを巻き付けて確保点とする。すぐに後続の引き上げに移るが、セカンドは順調に登ってくるが、ラストは一向に登って来ない。と思ったら、後続してくるはずのパーティーの方が先に登ってくる。私の登ったルートよりも上部の簡単な方から登ってきたそうで、なんでも私に後続しているラストが寒さで手の感覚がなくなって、まともに登れなくなってしまったので、やむをえず別ルートから登ってきたとのこと。この先には難しい所はないはずなので、彼らには先にいってもらってラストの到着を待っ。やがて現れたラストはなんとオーバー手袋をしている。これではなかなか登って来なかったわけである。そこからは簡単なピッチを登った後、一般コースと合流して阿弥陀頂上直下の風当たりの弱い所で待ってくれていた先行二人と合流する。
Photo_4

当初の予定ではこの後、赤岳主稜に継続登攀することになっているが、どうしたものかと思案してしまう。阿弥陀岳到着時間は予定をかなりオーバーしてしまっているし、体調不良の者がいる状態の大人数のパーティーで取りつけば、下降時はおろか登攀中にヘツデンが必要となる事態は必至で、常識的には主稜断念を決断すべきである。ただメンバーの中には主稜登攀を熱望している者もいるし時間も十分あるので、ここで断念を宣告するよりも文三郎新道の分岐点まで行って、そこで判断するとした方が状況が厳しくなっていることがより実感できるので、メンバー全員に受け入れられやすいという気がしたので、判断を先送りすることとした。

阿弥陀岳の下降は部分的には後ろ向きで降りる部分もあり、多少緊張しながら進む。中岳のコルまで降りると危険地帯も終わってホッとするが、阿弥陀岳からここまでで既に1時間は経っていて主稜登攀のための時間不足は決定的だし、この時期の八ヶ岳では当たり前なのだが稜線で強風に吹かれるという冬山の洗礼を十分に受けて、自分も含めて主稜断念を受け入れる気持ちになっただろうという判断から主稜断念を皆に告げる。ただ時間は十分あったので、赤岳山頂往復ないし地蔵尾根までの縦走を行うことは提案したのだが、文三郎新道への登りの途中で、阿弥陀岳頂上直下で我々の到着を待ってくれたメンバーの一人が長時間強風にあったためか低体温症状を訴えたので、私のダウンジャケットを貸すとtもに、すぐに行者小屋に下降することなる。ただ、明日の天候とメンバーの体調次第では赤岳主稜のトライもありうるということで皆にも納得してもらう。

行者小屋には3時前に到着したので、酒を飲んだり談笑したりして時間を過ごし、夕食後もしばらく歓談した後、就寝となる。

夜中に用足しで外に出て見ると、星は見えず小雪も舞っているので、主稜トライは99%ないだろうと思ったが、テントに戻ってからもIモードの天気予報を確認したりしながら、アラームをセットした3時の到来を待つ。やがてアラームが鳴ったので、皆の体調を聞くと、昨日体調を崩した者も回復には向かっているようだが、まだ万全ではないようだし、天候も昨日よりは悪いことは確実なので、主稜を断念して南沢大滝に向かうことを皆に告げ、5時起きに変更してもう一眠りすることにする。

方針が決まって安心したのか寝過ごしてしまい、目覚めたのは外が多少は薄明るくなってくる頃だった。急いで食事を摂り、テントを撤収して南沢大滝に向かう。下山時には荷物が軽くなることを期待したが、雪や水分が付着してかえって荷物は重くなってしまったように感じる。さらに自分は気持ちまで重くなってくる。というのは前2回大滝を登ったのはトップロープで、リードは今回が初めてだからである。リードで登ってみたいという気持ちと回避したいという気持ちが入り混じりながら歩いているうちに大滝に着いてしまう。だが大滝に着いてみると、前回見たときのような圧迫感はなかったのが意外であった。きっと、その間のアイスの経験と新しい道具の入手によるものなのだろう。正面の傾斜のきつい部分もアックステンションをかけてスクリューを打てば登れそうな気もしたが、全員で登るとなるとかなり時間がかかりそうだったので、右側のやや傾斜の甘い部分を登ることとした。
Photo_5
いざ取りついてみると、傾斜が緩いだけに登ること自体は問題なかったが、氷が硬くてスクリューを入れるのには苦労した。逆に上部では根元まで入っているのにスカスカで全然効いていない有様だ、上を見上げると終了点は近かったので、一気に登ってしようかとも思ったが、スカスカのスクリューを除くとかなりのランナウトとなってしまうことから、安全を期してもう1本スクリューを入れる。こんどは効いてくれたので、安心して終了点まで登り着く。

ただ終了点の立木の下は急斜面の氷まじりの雪なので不安定な姿勢で支点設置を行わなければならなかったのが辛かった。手順を間違えると先日の不動の滝のような事故になりかねないので事前に頭の中でシミュレーションして手順を再確認する。その内容は次のようなものである。

長いスリングを幹に回してセルフビレーをとる。

懸垂用に2本のロープを直結するにはハーネスからロープを外さなければならないが、いきなり外して誤って下に落としてしまうと大変なことになるので、ロープの端からある程度のところにコブを作り、それを幹にかかっているスリングにカラビナを通すという落下防止策をとった後にロープをハーネスから外して直結し、その後にコブは元に戻しておく。なおロープの端から相当離れたところにコブを作っておけば枝を回してから両ロープを連結することもできたのだが、長さが足りなかったので、連結後に片方のロープを引き上げて枝の向こうにロープを落とすという作業をせざるをえなかった。このあたりはシミュレーション不足であった。

結び目が支点のどちらにあるかを確認し、反対側のロープにトップロープのクライマーがつながるので、そのロープがどちらかをしっかり記憶しておく。

最後は下降器にロープをセットし終わったら、セットの再確認をしてからセルフビレーを外して下降に移るのだが、下降器へのセットが手袋をしていることと、ロープの自重でロープが下に引っ張られるのでかなり苦労した。下手をすれば、カラビナから外した下降器とも下に引っ張られて落としてしまいかねないので、ロープの自重の影響を受けないようにロープのコブは最後まで残しておいた方がよかったかもしれない。

懸垂で降りながらスクリューを回収しようとしたら、リードで登りたいという人がいたので、そのままにして下まで降りる。これで私のお役御免なので、あとは撮影専門にでもなってトップロープで登る人を映しかけたが、ここでハッと気づく。今登ったところをリード希望者がリードするのは、彼の技量ではかなり危険であること気づく。上部のスクリューが1本スカスカなので、安全のためには近くにもう1本打たなければならないが、氷の状態が悪いので、適当な場所が見つかるかという問題もあったが、それ以上に困難なのは、彼の技量と体力では終了点まで到達できても相当消耗しているはずなので、その状態で冷静にさきほどの①から④までの手順を行えるとは到底期待できなかったからである。そこで左側の上部は傾斜が落ちる部分をリードで登ってもらうことに変更し、リードそのものは問題なく終わった。ところが上部の立木で支点をセットしているところは下からは見えなかったのだが、次に同じところをトップロープで登った人が見てみるとなんと立木ではなく、懸垂用の残置スリングにメインロープをセットしてロワーダウンしたようだということである。ロワーダウンの荷重と摩擦で残置スリングが切れなかったのはラッキーであった。そこそこリードをしている人なのだから支点についてのそれなりの知識は持っているだろうと過信して登る前に適切な指示をださなかったのはリーダーとしてのミスであると反省せざるをえない。

全員が一通り登り終えたので、大滝をバックに記念撮影をしてから帰ろうとしたが、この時間には大滝は貸し切り状態なのでやむをえず交替で撮影をしていたら、見計らったように下から一人の登山者が大滝見物にやってくる。ラッキーと全員の記念撮影を彼に頼んでから下山に移り、暗くなる前に美濃戸口の駐車場に帰着する。いろいろとあったけれど、全て大事には至らずにそこそこ楽しめてラッキーな山行であった。だがラッキーなのはこれに止まらなかった。なんでも午後に駐車場のすぐ下で車が横転して、駐車場の車は通行できずにいて、我々が着く少し前にようやく通行できるようになったとのことである。つまり、もっと早く帰れても駐車場で足止めをくらっていたわけである。さらに近くの樅ノ木温泉に立ち寄ったら5時以降は割引料金適用というおまけのラッキーまでついていた。温泉で冷えた体を温めてから富山に帰る人とは別れて境川パーキングで遅い夕食を摂る。今日は昼もろくに食べてなかったので、Wカツ丼というのを注文したが、物凄いボリュームがあり、2枚のカツはなんとか平らげたが、さすがにご飯は残してしまった。しばらくはカツ丼は結構という感じである。
八ヶ岳南沢・阿弥陀北陵
食後は高速はさらに空いてきて、快適に相模湖まで
乗せてもらってJRに乗り換えて帰宅したが、反省すべき点は反省するとして充実した楽しい山行であった。

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