滝沢第三スラブ
アルパインのルート図集の出版が途絶えてから久しいが、このたびガイドの菊地氏から「日本の岩場」上下が出版されたことを本屋で知った。同氏は以前に同名のルート図集を世に出しているので、今回はその改訂版かと思ったら、そのような表示はない。その理由は本をめくってみてすぐわかった。
それは従来と異なりフリークライマーの視点から書かれているからである。従来はⅥのピッチグレードが含まれているだけで高いルートグレードが与えられていたが、フリークライマーのレベルアップもあり、Ⅵのピッチグレードは高いルートグレードには結びつかないとされたようで、「高難度」フリーのロングルートとして脚光を浴びた明星の各ルートも軒並みグレードダウンされている。
極めつけは比叡山のニードル左岩稜が5級下から2級に大幅グレードダウンされていることである。たしかに自分もこのルートを登った印象としては従来のグレードは過大である感は否めないが、いくらなんでも2級というのは、それはないだろうというのが実感である。
これにたいして、従来は5級下とされていた滝沢第三スラブが一挙に3段階アップして6級下とされたことが特筆に値する。これはⅣ〜Ⅳ+という気の抜けないピッチが30ピッチも続くことや、確保条件の悪さとルートファインディングの困難さがフリークライマーにとっては大きなプレッシャーになるからであろう。
私が滝沢第三スラブを登ったのは30年以上も前のことであるが、朝一番に取り付きドームを登りきったときには夜のとばりがおりてきて、暗闇の西黒尾根をかけ降りてきたことを昨日のことのように覚えている。当時ですら日曜日の滝沢スラブ全体が貸切状態となるほど登る人の少なかったルートだったが、その後はさらに減って、ルートは自然の状態に近づいて困難性が増してしまったことは考えられる。そういえば比較的新しい記録ではビバークしているものも多かったのもそのせいかもしれない。自分が登ったときに、格上げされたグレードだったらよかったのにと思う反面、このグレードではビビってしまって取りつこうとはしなかったかもしれないとも思ってしまう。
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