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2016年7月 5日 (火)

緊急事態条項は独裁国家への第一歩

参院選投票日がいよいよ目前に迫り、マスコミ調査では改憲勢力が衆参三分の二超えを実現する勢いであると報じらているが、これは由々しき事態である。

改憲勢力が衆参三分の二超えを実現した場合に自民党の憲法改正草案のうちどこまでの条項を発議してくるかは不明であるが、国民の憲法改悪アレルギーに配慮した自民党幹部の発言等から判断すると第一弾は「お試し改憲」として国民に馴染みの薄い「緊急事態条項」の制定を他の諸国でも導入している(もっともドイツを例にとると、地方分権が徹底しているので、緊急事態には中央に権限を集中させるためのもののようで、自民党案のように国民の権利を広範に制限するものではないようだ)制度だというもっともらしい理由をつけて企む可能性が高いと考えている。これにおおさか維新の主張している環境権という耳障りのよいものを取り入れてセットにすれば、国民の多くが騙されて、過半数の賛成を得てしまうこともあり得ない話ではない。

そこで今回は「緊急事態事態条項」というものが、いかに危険なものであるかということを述べてみたい。「緊急事態条項」とは自民党の憲法改正草案98条99条に記載されているものであるが、戦争や災害という事態だけでなく、内閣が緊急事態であると認めた時には、国会の決議なしに内閣は法律を作ることができるというとんでもない代物である。条文上は「法律の定めるところにより」となっているが、政権党であれば、都合のよい定めは幾らでも作れるのであるから、この定めはほとんど無意味である。他方では政権党が都合のよい法律を作れるのであれば、緊急事態条項はあってもなくても同じことで、緊急事態条項で騒ぎ立てるのはナンセンスだという主張があるかもしれないが、これは全く間違いなのである。国会の決議が必要ということになれば、一定の手続きと時間を要することになるので、その間に国民の広範な反対運動が起こり、政権党と言えども一定の妥協をせざるをえないという事態は十分考えられるが(天下の悪法の戦争法でさえ、発動要件に一定の縛りを設けざるをえなかった。そのため、改憲による縛り撤廃を狙っているようだが)、内閣が法律を作るとなると、そのような余裕も与えなくなってしまうのである。

戦前のドイツにおいて当時もっとも民主的といわれたワイマール憲法下においてヒットラーが国家緊急権を悪用して独裁国家を作り上げたことは何人も否定できない歴史的事実である。安部首相がそこまでやらないとしても、将来、問題のある人物が政権を取った場合には日本が独裁国家となるリスクが常につきまとうことになってしまう。こんな危険な条項を許してしまうことは、次の世代に対して取り返しのつかないは過ちを犯してしまうことになるのである。

(参考)自民党憲法改正草案
第98条(緊急事態の宣言)
 1 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
 2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
 3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
 4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。

第99条(緊急事態の宣言の効果)
 1 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
 2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
 3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
 4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。

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