札所巡りの札所間移動の一環として赤城南面の関東ふれあいの道を最初に考えた時は山頂近くの大沼のキャンプ場にテントを張るこつもりだった。しかし、この時期に山頂近くにテントを張るとなると、かなりの防寒具が必要で荷物が重くなるので、変則的ではあるが麓のホテルに荷物は預け、山頂と麓は片道だけはバスを利用することにした。
前橋駅近くのホテルから上毛鉄道の始発電車で赤城駅まで移動して、赤城山を目指す。2時間ほど歩いて群馬県のふれあいの道24番の起点であるサクラソウフラワー公園に着く。このあたりのふれあいの道は歩く人も少ないらしく、指導標もほとんどない。公園からしばらく歩いて赤城神社に着く。ここはこのコースの撮影ポイントで、県内のふれあいの道の踏破の認定を受けるためには、全コースの撮影ポイントでの申請者の顔入り写真が必要となるのだ。最初に見つけた鳥居の前で写真を撮ったのだが、本物の神社はもう少し奥まった所にあるようなので、そちらの鳥居の前でも写真を撮る。
ここからは自動車道も本格的な登りとなるが、地図上ではバス停までは15キロあって、最終の発車時間までは約四時間なので、時速四キロで歩く必要がある。坂道を時速四キロで登るためには、ある程度頑張らなければならないので、ギアを切り替える。
1時間ほど歩いた所で時間を計ると時速四キロは出ているようなので、この分ならば最終バスにはなんとか間に合いそうであった。ところが、そこから少し進むと右方向に分かれる舗装路と出会う。方向を示す標識はないので、どちらに向かう道かはわからなかったが、地図の歩行モードで検索すると、バス停までは直進するよりも距離は1キロほど短く表示されている。等高線入りの地図はダウンロードしてこなかったが、地図表示ではニキロ短くなっていても、山道に入れば速度は落ちることは十分予想された。しかし、悪魔の囁きには抗しきれず、そちらの道に進むと言う痛恨の選択をしてしまった。道は緩やかながら下っていき厭な予感がしたが、もう引き返すという選択はなかった。
しばらく進むとハイキングコースの登り口があり、歩きやすい道だったので、ひょっとしたら意外と早く着けるのではという淡い希望も湧いてきた。だが、それもアップダウンが出てくると無残に打ち砕かれてしまった。やがて夕闇が迫ってきたが、依然として登りは続いている。最高点を過ぎて下りになったが、バス停のある小沼方面にまっすぐ進むのではなく、沢に下ってからは沢沿いの道を進んでいかざるをえなくなる。標識は要所々々に着いているので、道を間違えたわけではないことは明らかだが、このまま進んでも埒があかないので、進路を変えて当初の自動車道の方向を目指すことにした。
強引に斜面を登って自動車道に這い上がった時は、既に最終バスは出ていたので、そのまま自動車道を最寄り駅まで降りていくという選択もありえたのだが、最終バスは終わっていても、もう少し下の方からは遅い時間でもバスは出ているようだし、そちらの自動車道に向かって斜面を横切る道も地図上にはあったので、そちらに向かうことにした。
最終バスが通り過ぎた後の自動車道に移れたのは7時過ぎで、前橋駅までの距離は地図で調べると30キロ弱となっていた。前橋のホテルには不用な荷物を置いたままであり、チェックインは昨夜終わっているので、何時に戻ろうがかまわないわけだが、とりあえずは駆け足で下ってみることにした。
ヘアピンカーブの連続する下り道で、下り始めた時のカーブの番号は45番だったが、1番まで駆け足で降りてきてもまだ下りは続いている。そこでグーグルマップで調べると、今のペースで降りた場合にはこの先のバス停の最終バスにも間に合わないことがわかった。どこかで前橋行きのタクシーを呼ばなければいけないことははっきりしていたが、下りの駆け足はさほど体にダメージはないようなので、もうしばらくは駆け足でおりることにした。
しばらく進むと、前方に赤い鳥居が見えてきた。今まではタクシーを呼ぼうにも、現在位置を運転手に知らせる術がなかったので、タクシーを呼ぶのはためらわれたが、ここならば絶対にわかるはずだと思いタクシーを呼ぶことにした。前橋駅までは約八キロ弱の地点であり、このまま駆け足で進んでもホテルに戻るのは日付が変わってしまうので、タクシーを呼ぶのはいいタイミングであった。
ホテルの近くまでタクシーで戻ったのは十一時前だったので、近くのニンニク屋てステーキを注文して生ビールで帰還を祝う。今日の行程は登り下りで60キロ近くとなり、ちょっとしたトレランレース並みであった。この疲労が一晩でどれだけ取れたかによって、翌日の行動を考えることにした。
当初の予定では翌日は最終バスに乗ろうとした地点まで始発バスで戻って、大沼経由で関東ふれあいの道を伊香保温泉の下まで進むつもりだったが、翌朝起きてみると、足を中心た疲労は半端なものではなく、当初予定の長丁場はとても無理だということがわかった。それに昨日は途中で降りてしまったので、その先から前進しても歩きは繋がらなくなり、坂東札所を一筆書きで繋げるという目的は果たせなくなる。そこで考えついたのは、関東ふれあいの道の歩き残した所は後日に回し、昨日降りてきた付近から渋川駅まで歩いて次の水沢寺巡りに繋げて一筆書きを維持するというものであった。これならば、歩くのは13キロ弱なので、なんとか歩けそうである。
時速三キロにも達しないスピードでしか歩けなかったが、赤城山や榛名山の眺めに助けられてなんとか明るいうちに渋川駅に着くことができた。今回は前半の関東百名山も後半の関東ふれあいの道もミスが続いて散々な目にあったが、なんとか最低限の目標は達成できたので良しとしよう。
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