メンドーサの休日
初日のホテルは街の外れで買い物等に不便だったので、中心街の方へ移ることにする。ダウンタウンの方へ歩いて行くと、さすがに真夏だけあって標高が800メートルほどの高地であるにもかかわらず、真夏だけの朝だというのに暑く感じる。といっても、日本の真夏よりははるかにすごしやすいが。
カードの使えるカフェテラスで朝食をとってから、両替できるところをさがしに行く。少し先にあった銀行で両替しようと思ったら、ここではできないといわれる。両替できる場所を教えてもらって、そちらに歩きかけたが、よく調べると今日の泊場の近くなので、荷物を泊場のドミトリーに置いてから両替に行くことにした。ところが、ドミトリーの場所がどうしてもわからない。予約確定時のメールにあった略図で病院の裏手にあることは間違いないのだが、どの建物にもなんの表示がないので、どの建物が目的地なのかがわからない。ところが、向こうからバックパッカーらしき人がくるので、聞いてみると、すぐそこだと言う(実際は色々な説明をしていたようだが、よくわからなかった)。そこで、メールにあった住所も頼りに捜すとなんとかたどり着くことができた。
8人部屋に案内されて荷物を整理してから、再度両替屋の場所を確認して出かける。両替所の近辺まで来ると、両替に来たのかと大勢の人に聞かれる。多分、よからぬ事をたくらんでいる人に違いないと無視を決め込む。目標の両替屋には着いたが、1軒しかなく長い行列ができている。日本の両替屋と違い、一人当たりの処理に時間をかけている。しかも、窓口での対応が終わると別室に連れて行かれて、なかなか帰ってこない。もしかしたらサラ金も兼ねているのかもしれない。私の場合は別室に連れて行かれることはなかったが、150ドルを渡したら172と書かれた計算書が出てきて、なんだかわからないが50ドルを追加でだすと、分厚い札束を渡された。そのせいでお大尽にでもなった気分となり、近くのカフェテラスで昨日のビールお預けの仇を取って、料理もたらふく食べることになった。
食事を済ませてからは、アコンカグア登山を運営している会社を訪問して費用の支払と情報入手を行うことにした。場所は住所から探しあてたが、入っている建物の1階のカギがかかっていて中に入れない。そこで電話してカギを開けてもらって、会社の階まで行って無事用件を済ませてきた。
これで今日の用件はひととおり終えたので宿に戻ってのんびりするつもりだったのだが、ベッドに横になってウトウトしていると、足の前方がつった状態になって痛み出した。しばらくして痛みは治まるが、しばらくして両方の足の前部がつってしまう。やはりしばらくすると元に戻るが、エコノミー症候群かなとも思ったが、その後は再発はしないので、エコノミー症候群とも違うようである。症状的には昔アメリカ大陸を自転車で横断した時に、毎晩睡眠時に足の前部がつってしまった時と症状は同じである。今回は疲労があったわけではないが、足が自由に動かせなかったことによるダメージのためだろう。いずれにしても、アコンカグア登山を前にして幸先の悪い事である。
翌日は日程の余裕があったため、チリとの国境に近いアツコンカグアの展望台までいくツアー申し込んであったので、暗いうちから宿を出る。このツアーはホテルまでの送迎つきなのだが、さすがにドミトリーまでの送迎はしてくれないだろうと思って初日に泊まったホテルを送迎場所として連絡しておいたが、かなり距離があるので、このくらい早くから出発しないといけないのである。
初日のホテル前にはピックアップ時間の5分前に着きバスを待つが、一向にバスは現れない。30分ちょっと経過して、諦めて帰ろうとした矢先にツアーバスが現れてビックアップしてくれる。危ないところであった。
車内はほぼ満席だったが、最後尾の四人席が空いてたので、そこを独り占めかと思ったら、最後に乗り込んできた男女のペアか私の横に座りこんできた。乗客は私以外は全員アルゼンチンのようで、ガイドがスペイン語でまくし立てていて、ムーチョ(英語のvery)以外は一語もわからないが、ちょうど良い子守唄にはなる。
途中の見所には必ずといっていいように立ち寄るのは、土産物屋に誘導するとともに高所順化も兼ねているのだろう。アコンカグアが正面に見える所でも小休止したが、本番ではこの谷を詰めて行くのだろう。
さらに進むと国境越えする舗装路と別れて、展望台に向かう未舗装路の急坂を登って行く。つづら折りの道は運転を誤れば谷底に真っ逆さまだが、道が広いので特に怖さは感じない。やがて、ちょっとした広場に着くとクリスト像が建っており、ツアーのゴールのようである。
クリスト像の少し上まで登って高度を測ると3850メートルであった。低酸素室で6000メートルの酸素濃度を経験している自分にとっては、富士山程度の高度に達したからといって特に意味はないのだが、まあ暇潰しと時差ボケ解消のための日程消化としておこう(ルートも途中までは本番と同じなのだが)。
帰りは少し降りた所にあるレストランでバイキング料理を食べてからメンドーサ市内に戻る。アルゼンチンワインの一大産地であるメンドーサではワインとパスタを食す。日本ではワインなどほとんど飲んだことがなく、ワインについて語る資格は全くないが、これから山に入るとワインを飲む機会もなくなるだろうから、メンドーサ滞在中にしっかりとワインを味わっておこう。
ドミトリー最終日は登山エージェントが予約しているホテルに移動してガイドと登山の打合せをするだけだが、時間が余るので今後のスケジュールを再検討することにした。まずはアコンカグア登山を終えてメンドーサに戻った翌日のブエノスアイレスまでのフライトを予約した。次に南米最南端のウシュアイアまでのフライトを予約しようとしたら、空席があまりないか、あってもすごく高い便しかないのに驚く。ここでピーンときたのは春節の時期に当たっており、中国人旅行者が大挙して押し寄せているに違いないということである。この分ではホテルの空室も多分見込めないだろうから、予定を変更してまずはパタゴニアに行き、春節が終わってからウシュアイアに行くことにした。今回の旅行の最大目標はパタゴニアなのだから、パタゴニアに先に行くことの方が自然だろうと思える。
ドミトリーとエージェント予約のホテルとは歩くと小一時間はかかるようなので、一般的にはタクシーで行くのだろうが、ホテルならばともかくドミトリーではタクシーを捕まえるのも大変だし、メンドーサでは流しのタクシーもほとんど見かけない。路線バスはたくさん走ってるし、グーグルマップで路線番号もわかるのだが、こちらのバス料金は現金払いではなくプリペイドカード払いということのようで、カードの売り場もわからないし、いくらチャージしたらよいかもわからないので旅行者にとってはハードルが高く思える。そこでやむを得ず歩いていくことにしたが、大きな荷物を携えてやってきたのでホテルの従業員も呆れていたかもしれない。
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