日本アルプスの主稜線は通常登られている所は全て踏破し、支稜のうち途中に顕著なピークや山小屋があって、良く登られているコースを踏破しようと思っているが、手始めに立山北方の別山から大日岳方面に延びる尾根に向かうことにした。別山から奥大日岳までは以前に往復したことはあるのだが、奥大日岳に直接登るコースはないようなので、奥大日岳までは重複することにはなるが、大日岳までの未踏のコースを歩くことにした。
6月16日
夜行バスで早朝の富山駅前に着き立山駅に向かう。初日は雷鳥沢でキャンプする予定なのでアルペンルートで室堂に向かうのが一般的だが、それではあまりに安易なので、称名滝バス停の先からアルペンルートに向かって登り出し、弥陀ヶ原付近のいつもはバスで通過してしまう広大な高原を木道を歩きながら楽しもうというプランである。
立山駅の始発のバスは8時半と遅く、1時間ほど時間待ちとなる。それでも、乗り合わせた乗客は私の他にもう一組だけというがら空き状態である。なんでも一般の観光客はもう少し遅いバスで来るとのことである。
終点で下車して登山者カードを提出してから歩きだす。しばらくすると、大日岳登山道の登り口があり、それを過ぎるとすぐに称名滝の展望台に続く道が分岐する。称名滝は室堂へのバスの途中から何度も見ているが、間近から見てみたいということで、今回足を延ばすことにした。

展望台から正面に仰ぐ称名滝は落差日本一と言われるだけあって迫力満点である。この滝もいくつからのルートから完登されているようであるが、往年の私の力量でもとても不可能な所である。
展望台には下から走ってきたトレランの人が何人か登ってきていたが、そういえば、立山の室堂まで走るトレランレースがあるようで、彼らもこの後、私が登ろうとしている弥陀ヶ原までの山道を走る人がいるかなと思ったが、そのコースを登る人がいるかなと思ったが、そのコースには通行止めの表示が出ていて、誰も立ち寄る人はいないようであった。もっとも、通行止めの表示は観光客向けのものであって、登山者には関係ないもののようである。何となれば登山者向けのものならば、どこそこが崩壊していて通行できない等の理由が書いてあるはずだからだ。なお、室堂までのトレランレースはこの山道ではなく、立山駅から美女平に向かう有料道路経由とのことである。
山道を登り出すといきなりの急登である。ただ背後に称名滝の景観が眺められるので、だいぶ辛さも和らげられる。道は所々に倒木があったりして、あまり登られてないよ
うである。
急登が終わり緩やかな道になるとアルペンルートに出る。ここからしばらくは木道はなく、舗装道路を歩かされる
日曜日と言うこともあってか、アルペンルートのバスがひっきりなしに通るが、マイカーは通れないので渋滞はない。やがて道は木道となり、天気が良ければ弥陀ヶ原の広大な景色が眺められる所であるが、あいにくの天気で残念である。
弥陀ヶ原のバス停まで来ると、係員が数人待機していて、「どこに行くのか?」「天気が悪いのでバスに乗った方が良いのでは」と引き止められる。時間的に当初予定の雷鳥沢までは無理だが、天狗平山荘までならば2時間くらい歩けばいけるのではと思ったが、天気が悪くて展望のない中を歩いてもしょうがない気もしたので、大人しく室堂までバスに乗ることにした。日曜日のこんな時間に室堂室堂まで行く人はあるまいと思ったら、ぼぼ満員に近い状態でバスが来たので、乗れないかと思ったら、団体客は弥陀ヶ原で下車とのことで、室堂まで行く人は私を含めて数人だった。
室堂近くの雪の大谷では5メートルほどの雪壁が残っていて、思っていた以上に残雪が多いのに驚く。室堂に着くと、雷鳥沢まで行くのが面倒になったので、ホテルに泊まろうかなと考えが変わって係員に聞いてみると、宿泊だけで三万円以上と言われて即座に却下。近くの室堂山荘に泊まることにした。こちらは一万二千程度で2食付き、大風呂、wifi利用可という条件で大満足でした。
6月17日
雪の量が思ったより多いので、立山三山は諦めて雷鳥沢から直接大日岳方面にむかうことにした。雷鳥沢までは何度も歩いたことがあるコースだが、雪のある時期は初めてである。
雷鳥沢からは別山乗越方面に向かう登山者はそこそこいるが、奥大日岳方面に向かうのは私だけである。夏道は雪に隠れて見えないので適当に登りやすい所を登っていく。大して雪はあるまいと思って軽アイゼンしか持ってこなかったが、これだけ雪が多いと八本歯以上のアイゼンを持ってくるべきだった。なにしろ軽アイゼンでは爪を雪面に垂直に立てるだけては不安で、つま先を一度蹴り込むという作業が加わるので、疲労も多くなってしまう。やっと稜線に出て奥大日岳方面に向かうが、その間にも何度か雪渓を横切る箇所がでてくるが、やはり軽アイゼンだと神経を使い疲労すも大きくなってしまう。

やがて奥大日岳の頂上手前で雪渓を横切る所が出てくる。ここは今までよりも傾斜が急でスリップしたらただでは済みそうもない。アイゼン、ピッケルを持参していれば問題はないが、軽アイゼンとストックだけでは不安なので、どうしたものかと思案していたら、少し上まで登れば雪渓は切れていることを発見、草付きの急な斜面は軽アイゼンがバッチリ決まるので苦もなく上がる。雪渓の上部を渡って反対側を下ろうかと思ったが、頂上ほ間近なので先ほどの道も雪渓を渡った後に頂上に向かうに違いないと判断して稜線に沿った雪田を歩くと案の定、下からの道と合流して奥大日岳の頂上直下の大日岳への分岐点に着く。奥大日岳は一度登っているので素通りしても良いようなものだが、せっかく来たのだからと頂上まで行ってみる。
頂上はすぐ近くで、大日岳方面のコースがよく見通せる。今までと違ってだいぶ雪が少なく、雪のない時と比べて大幅なタイムオーバーはしなくてすみそうだ。ただ時間は3時半であり、日没前に大日岳に到達できるかが気がかりである。

その後は比較的順調に進み、頂上手前で日没を迎える。ただ、その色がどす黒いような赤で、こういう色の夕焼けは悪天の前触れであると聞いているので、少しいやな気がした。頂上手前のピーク付近でまた雪が現れたので、少し手間取ったが、なんとか薄明かりの中で頂上手前の小屋を発見する。悪天が間違いないので小屋に入りたかったが、無人小屋は完全に閉め切っていて残念ながら小屋には入れない。その代わり、資材を収納してある物置には入れたので、なんとか風雨は防げそうだ。安全な場所を確保できたので、現金なもので早く雨が降ってくれないかと思ったが、不気味な風の音がするだけでなかなか雨は降ろうとしなかった。
6月17日
壁にもたれかかって夜を過ごしたの良く眠れなかったが、うつらうつらしていると、空は明るくなっていたが、弱い雨が降りだしていた。まずは往復で30分ほどかかる大日岳の山頂を往復するかどうかである。今回の目的は大日岳に続く尾根を踏破することであり、大日岳の山頂に立つこと自体は主目的ではないので、雨の中を展望もない山頂に立っても仕方ないといくことで、雨が小降りになったらげざしようと待機してきたが、弱くなるどころか却って強くなってきたので、7時半に下降を開始した。
大日平までの急な下りの前半は雪の上を歩くこともなく順調に進めたが、後半は雪の斜面を横切ったり、下降することが多くなり、軽アイゼンでは通過に時間を要することとなった。大日平小屋に降り立つまでは最終バスに間に合わなくなるということは、全く念頭になかったが、小屋前で時間を計算し直すと、ギリギリの時間であることがわかりペースを上げたつもりであったが、連日の行動による疲れもあり、結局は大してペースも上がらず、称名滝に続く林道に降り立った時は、最終バスの時間よりも1時間ほども遅れてしまった。ギリギリでまにあわなかったのであれば腹が立つが、これほど遅れると腹も立たなかった。何故ならば、その時は下からタクシーを呼べばいいと思っていたからである。

降り立った林道からは称名滝は見えなかったが、称名滝の右側に一昨日には見えなかった滝が雨で増水したことにより出現して儲かったような気になった。考えて見ると、今回の山行は称名滝を含む称名川を一週するものであったなと満足しながらバス停まで下り、スマホが圏外でタクシーが呼べないため、そこにある土産物屋兼食堂で用を足してからタクシーを呼んでもらうはずだった。ところが、店にはカギがかかっており、厨房には電気がついたままなのに、ドアを叩いたり呼びかけても一向に反応がない。ついに根負けして、下の駐車場まで下れば管理人がいるはずだからタクシーを呼んでもらおうと思ったが、なんと無人の駐車場であり、タクシーは利用できずに立山駅まで3時間近く歩かなければならないことがわかり愕然とした。
基本的には下り一方なので、順番に足を前に出して行けば駅にたどり着けると言うことはわかっていたが、3日間の疲れも加わって次第に耐えがたいものになってきた。特に立山駅の直前になって登り坂になってきた時は一歩進むごとに休む羽目になった。ようやくたどり着いたのは、立山駅の西口だったので、もうひと頑張りして踏切を渡って東口まで行ってみることにした。と言うのは、東口には何軒かの店やがあるので、そこで最終電車のまでの1時間近くを過ごせるとおもったからである。ところが東口に行ってみると、最終電車がまだあるというのに店は統べて閉まっていたのである。
自販機で飲物だけを買って時間まで待って富山駅に向かい、富山駅の売店でビールとおにぎりを買って金沢行きの新幹線の発車時間までホームのベンチで過ごそうと思ったが、疲れ過ぎたためかお握りは1個しか食べられなかった。
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